2020
7
Nov

梶原一騎

「タイガーマスク」 2つの最終回

*ネタバレ嫌な方は読まないでください。
「タイガーマスク」は、「巨人の星」や「あしたのジョー」と同じ梶原一騎原作の昭和40年代を代表するマンガとテレビアニメです。
孤児院で育った伊達直人は、悪役プロレスラー養成所の「虎の穴」にスカウトされます。10年間の死の訓練に生き残り、最高の称号である「タイガーマスク」(長いので以下「タイガー」)を名乗ることを許され、悪役覆面レスラーとしてデビューします。
日本に帰国した伊達直人は、お金持ちだと偽り孤児院を訪れて借金を肩代わりしますが、そのため虎の穴に納めるファイトマネーが払えなくなります。死の掟を破ったことから、虎の穴は裏切り者のタイガーを抹殺するため、次々と悪役レスラーを送り込み、正統派レスラーに転向したタイガーと死闘を繰り広げることになります。

画像のフィギュアは、「ファイテングコレクションパート1」(たぶんパート4まではあるがそこまで手が回らない)。タイガーと伊達直人(顔がちょっと変)以外は、「ミスターX」(虎の穴のマネージャー)、「グレートゼブラ」(正体はジャイアント馬場でタイガーを助ける、やっぱり馬だった)、悪役レスラーの「黄金仮面」(覆面が光って相手の目を眩ませて、その隙に鉄の牙で噛み付く)、そして誰もが覚えてる「ミスター・ノー」(頭の上に鉄球を乗せているが、その上から全体をすっぽり着込んでノッぺラボー状態になることで、鉄球という凶器をごまかす(?)。でも、覗き穴と空気孔が必要なので首(どう見ても本当の頭だけど)のところに“NO”と記した孔を開けている。なんか楽しい。)

2年間のテレビアニメの最終回は、意外な展開です。最後の敵、虎の穴の創始者で最強のレスラー「タイガー・ザ・グレート」とのレフェリーなしの無法試合に臨みます。反則をしないタイガーは、相手の反則攻撃にほとんど抵抗もできないままあっというまにボロボロにされます。真っ二つになった机の破片でタイガーの顔面を執拗に狙い、ぎりぎりで躱すもののマスクはどんどん削りとられ、ついに顔面に突き刺る!と思った瞬間、タイガーはマスクから顔を抜いて危機を脱しますが、素顔になって正体がばれてしまいます。

その時タイガーは何を考え悟ったのか、そこから怒濤の反則技で反撃にでます。タイガー・ザ・グレートをボコボコにし、ついにはリング上の照明器具に吊り下げ、サンドバックにして流血のなぶり殺し状態です(PTA協議会には怒られなかったのだろうか)。最後は、タイガー・ザ・グレートは照明器具とともに落下し、その下敷きとなって観客やテレビを見ている子ども達の前で絶命します(今ならBPOに叱られそう)。そして遂に虎の穴を倒した伊達直人は、一人飛行機でいずこともなく旅立って行きます。

主題歌では、「フェアプレーで切り抜けて、男の根性見せてやれ〜♪」と歌っていたのに、最後は目的を達成する(虎の穴を滅ぼす)ためには、反則であろうが手段を選ばないというラストは当時の子どもたちにどう映ったんでしょうかね。(まあ私のように単に大逆転劇に胸躍らせただけかもしれませんけど…)

マンガの最終回はアニメと全く異なります。
タイガーが世界ヘビー級(だったか?)選手権の再戦のために会場に向かう途中で、トラックに轢かれそうになる少年を助けますが、タイガーは撥ねられてしまいます。薄れる意識の中で最後の力を振り絞り、タイガーのマスクをポケットから取り出すと近くのどぶ川に投げ捨て、タイガーであることを隠して息絶えます。

アニメでの正義のヒーローとしての死とマンガでの伊達直人としての死という真逆の結末ですが、どちらもハッピーエンドではありません。3つ目の最終回もあったのではと思ったりします。